はじめに
盗撮や盗聴は被害のケースによって異なるため、一概に示談金(慰謝料)の相場がいくらと簡単に言えるものではありません。
盗撮に関しては、迷惑防止条例や軽犯罪法に抵触し、逮捕され処罰される(罰金刑又は懲役刑)こともありますし、盗聴に関しては、盗聴行為に付帯する犯罪に抵触することもありますが(下記リンク参照)、それらに該当しないケースでもプライバシー侵害として、示談金(慰謝料)を請求することはできます。
【参考リンク】あんしんライフ
盗聴と法律|盗聴は犯罪ではない?違法ではないか?
この記事では、電車内、エスカレーター、公衆浴場などの公共の場所や、更衣室やトイレ、住居内などプライベートな空間での、盗撮・盗聴の被害に遭った場合の示談金(慰謝料)の相場や示談交渉のポイントなどについて解説します。
なお、当記事は、一般的な法律に基づいて説明しています(2020年11月時点)。 法改正などにより、現行の法律と掲載内容に相違がある場合もございますので、具体的な法律に関するご相談は弁護士や法律事務所へお願いいたします。弊社では、法律に関するご相談は承っておりませんので、あらかじめご了承ください。
盗撮・盗聴と示談について
個人的または会社内での盗撮・盗聴は、家族内や友人間で発生する事案が多く、行為が発覚しても露見せずに示談で済まされる場合もあります。まずは、示談について明確に理解しておくことが重要です。
【2-1】示談とは?
示談とは法的に民法第695条の「和解契約」にあたります。
簡単に説明すると「当事者同士の話し合いによって解決する手続き」のことをいい、一般的には加害者が被害者に対し謝罪と反省の意を伝え、慰謝料などを示談金として支払い、被害者は示談金を受け取ることで、加害者を許したり被害届や告訴を取り下げたりします。
なお、示談交渉は当事者同士または代理人の弁護士の間で行われるため、加害者の特定はもちろんのこと、言い逃れができないよう事前に証拠を固めておく必要があります。
【2-2】示談のメリット
示談のメリットとしては、以下の点が挙げられます。
- 1.金銭面以外の条件も併せて合意できる
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損害賠償について裁判で争う場合、原則的に「損害賠償金をいくらにするか」という判決のみになりますが、示談については、当事者間の合意のもとに内容を決めるため、金銭以外の条件を加えることができます。
例えば、以下のような条件を加えて合意することにより、二次被害の防止や個人レベルでのリスクマネジメントへの対応が可能となり、盗撮・盗聴の不安解消に向け、被害者にとってよりよい環境を整えることができます。
「加害者および被害者は盗撮・盗聴の件を第三者に口外しない」
「加害者は被害者に今後一切接触しない」など - 2.訴訟などの法的手続きよりも早期に解決できる
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訴訟では、おおむね1か月に1回程度の期日ごとに準備書面や証拠を提出し合うことになります。そのため、審理が進むペースはかなりスローであり、終結までに1年以上の期間がかかる可能性もあります。
一方、示談の場合、当事者間での合意が成立した段階で、いつでも示談書を作成して解決することができます。早ければ数週間程度で示談がまとまるというケースもよく見られるところであり、このようにスピーディに問題を解決へと導ける点も、示談のメリットといえるでしょう。
- 3.被害の状況などが公にならずに済む
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訴訟ともなれば裁判の際に聞かれたくないことを根掘り葉掘り聞かれることもありますし、第三者へ被害状況などが知れ渡ることもありますが、示談の場合、そのようなことを最小限に食い止めることができます。
盗撮や盗聴の被害に遭われた方は、場合によってPTSD(Post Traumatic Stress Disorder:心的外傷後ストレス障害)などの症状があらわれるケースもありますので、被害者の周囲の方は弁護士も交えて、被害者にとって最良の対応を行う必要があります。
【2-3】示談のデメリット
- 1.加害者に厳罰を求めている場合には注意が必要
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デメリットというよりも注意が必要なのが、加害者に対して厳しい処罰感情を持っている場合です。 示談はあくまで民事上の解決となり、刑事上としては別のものですが、示談が成立していると、刑事の面でも大きな影響があります。
示談というのは、原則的に加害者が処分・量刑の軽減の代償として金銭で解決したいと交渉してくるものです。そのため、被害者側が示談に応じてしまうと、交渉内容に納得していると受け止められ、刑が軽くなる可能性があります。
例えば、起訴すれば本来は有罪になる見込みがあるものの、示談が成立することで、不起訴処分となることがあります。起訴されなければ、加害者には前科もつきませんし、刑事罰も受けずに済んでしまいます。
少しでも厳罰を望む場合、示談を拒絶した方がよいですが、示談に応じなかったからといって必ずしも加害者が厳しい処分を受けるとも限りません。示談に応じたかどうかは重要な考慮事由にはなりますが、必ずしも望んだ結果に結びつくとは限らないので、弁護士などによく相談した上で見極める必要があります。
盗撮・盗聴の示談金(慰謝料)相場について
盗撮・盗聴の示談金額は、被害者が受けた精神的損害の程度や、それ以外に発生した損害額などを踏まえたうえで決定されます。
以下では、盗撮・盗聴の示談金額に関する考え方や相場を解説します。
【3-1】示談金の内訳について
示談金とは、示談が成立した際に加害者から被害者へ支払われる損害賠償金のことを言います。損害賠償金とは、被害者が被った精神的苦痛に対して支払われる慰謝料や、それに伴う治療費、休業損害、逸失利益などを含めた金額で、場合によっては弁護士費用なども考慮して示談金として請求したり、支払われたりします。そのため、示談金の金額については事案によってケースバイケースとなります。
【3-2】示談金はいくらが妥当か|示談金の相場
前項の通り、様々な要素を考慮したうえで金額が決まるので、盗撮・盗聴の示談金に明確な基準や相場というものはありませんが、一般的には【50万円以下】というケースが多いようです。
主に以下のような要素などから考慮され、被害者と加害者、または当事者の代理人(弁護士)の間で交渉され金額が決定されます。
- 盗撮または盗聴された内容とその利用手段
- 被害者の精神的被害の規模
- 加害者の収入や社会的地位
「盗撮または盗聴された内容とその利用手段」とは、窃取された情報の重要性やインターネット上への公開、撮影した映像の販売、脅迫などがあったかどうか、それらの行為によって実際に発生した損失などを考慮するので、交渉や手続きが煩雑になるため、実際には弁護士に依頼されるケースが多くなります。
盗撮や盗聴の示談金は、交通事故のように行為そのものだけではなく、行為に付随する要素が個々のケースによって異なるため、「相場がない」ということになってしまいます。そのため、場合によっては、100万円以上の高額な示談金になることもあります。
【3-3】裁判の判例について
示談金は当事者間で解決されるので公開されているようなデータはありませんが、参考までに裁判の判例について確認してみましょう。
盗撮・盗聴に関する判例1(損害賠償請求)
東京地方裁判所 裁判年月日:平成15年6月9日
<事案内容>
妻子ある被告男性が、職場の部下である約20歳年下の原告女性に好意を寄せ、継続的にセクハラ行為に及び、仕事中にビデオカメラにて長時間ズームで体の特定の部位を盗撮するなどした。
<判決>
- 休業損害
- 約126万円
- 逸失利益
- 約103万円
- 慰謝料
- 約100万円
- 弁護士費用
- 約20万円
- 損害額合計
- 約350万円
盗撮は不適切行為の一部に過ぎません。原告の健康を著しく損ね、退職にまで至らせたため、非常に高額な損害賠償となりました。
盗撮・盗聴に関する判例2(損害賠償請求)
東京地方裁判所 裁判年月日:令和2年1月29日
<事案内容>
性風俗店(いわゆるデリバリーヘルス)で働く原告女性が接客中に無断でモバイルバッテリー型ビデオカメラを用いて盗撮されたとし、常連客の被告男性を訴えた。
<判決>
- 逸失利益
- 0円
- 慰謝料
- 50万円
- 損害額合計
- 50万円
盗撮のショックから原告の欠勤が増えたため、逸失利益の約48万円と慰謝料70万円を求めたが、接客中に原告が被告に別の理由で欠勤が増える旨、伝えていたことから逸失利益は認められませんでした。また、被告が風俗店スタッフに咎められた際、記録媒体(SDカード)を提出しなかったため、動画が流出する可能性への恐怖や不安を考慮され、慰謝料50万円の損害は認められました。
上記2つの事例は盗撮に関連した裁判の判例ですが、一方は盗撮以外の不適切行為も多分に含んでいる実例であり、被害の大きさも違うので単純に比較することはできません。
しかしながら、判例2に関しては争点が「盗撮の有無」と「被害額とその因果関係の有無」なので、単純な盗撮事案の慰謝料の相場の目安にはなるかと思います。盗撮の可能性は高く認められましたが、慰謝料に関しては原告の70万円の請求に対し、50万円のみ認められました。
必ず示談書を作成しましょう
加害者との間で示談が成立した場合には、その内容を必ず示談書にまとめておきましょう。
【4-1】示談の内容を客観的な証拠として残しておくことが大切
せっかく示談が成立してもあとで相手方に反故にされては意味がありません。 口約束だけではなく、示談内容を明記した示談書を必ず作成し、保管するようにしましょう。
特にストーカーなどの継続的な被害に遭っている場合、示談が成立したからといって、すぐに不安が解消されるわけではありません。客観的な物的証拠として示談書を所持することなどで、少しでも被害者の不安を取り除く環境を構築することが問題解決に向けて非常に重要になってきます。
【4-2】示談書の公正証書化(強制執行認諾文言付き)が必要
示談書を作成したからといって安心はできません。なぜなら、示談書は法的拘束力がない私文書に該当するためです。例えば、示談金の支払いが滞ったりした場合、民事訴訟を起こさなければならない可能性があります。
このような状況を未然に防ぐために示談書を公正証書化しておく必要があります。
強制執行認諾文言付きの示談書を公正証書化しておけば、示談内容に関して履行されないトラブルなどが発生した際に、裁判を行わなくても強制執行などの法的手続きが行えます。ただし、公正証書化された示談書で強制執行できるのは、現金や銀行口座などの金銭的なものに限定され、不動産の差し押さえなどはできませんので、ご注意ください。
示談書は費用をかけずに当事者間の私文書として作成することもできますが、示談を交渉する相手が盗撮や盗聴を行うような人物ということを考慮すると、弁護士に依頼し、万全を期して示談を成立させることをお勧めいたします。
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盗撮・盗聴の被害に遭われて示談を行う場合、示談交渉の相手の特定と証拠を集めておく必要があります。当然ではありますが、「なんとなく疑わしい」では示談以前の問題で、相手は認めることさえしないでしょう。
盗撮・盗聴に不安を感じたら、まずは信頼のおける専門の業者に依頼して盗聴器や盗撮用のカメラがあるかどうかを確認し、発見された時に適切に対処することが重要になります。
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